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変革の瞬間−8
中央制御のないネットワーク
中央制御のないネットワーク

30年前。中央に設置されたコンピュータに資源を集中して、みんながそれをシェアして使おうと考えたメインフレーム時代があった。バッチ処理が中心でスタートしたが、当然のことながら、個人が直接使えるようにしようとネットワーク化する動きも出てきた。これがタイムシェアリングの考え方であり、コンピュータに何台の端末がつながるかが話題だった。
 ネットワークシステムといっても、向かう先は中央のコンピュータであり、そこで動くソフトも中央集中的で、1つのソフトが何台もの端末を中央制御した。ソフトは、すでに決められた業務を遂行するためのものであり、企業の勘定系の業務を処理するプログラムが中心であった。そこでは、人が新しい業務を考え出すためのシステムはもとより、ワープロや表計算のような個人向けの要求にも対応できなかった。
 1980年ころから活発になったパソコンは、初めから個人向けのコンピュータとして開発されたから、アプリケーションの中心はワープロや表計算だった。しかし、個人向けにしては値段が高く、パーソナルコンピュータとはいうものの、本当に個人使用の大きな流れができると考えた人は少なかった。結局は、企業全体のメインフレームに個人端末として接続し、両方のニーズを満たすようなシステムができあがったのである。いずれにしても、パソコンのつながれた先は中央のメインフレームであり、ネットワークシステムが中央集中的にできていることに変わりはなかった。
 こんな動向とは別に、米国国防総省はネットワークが中央集中的になっていると、攻撃されたとき致命傷になると考え、中央のないネットワークを開発しようとしていた。これこそ今日のインターネットのルーツであり、米国の情報産業が活気づき、ベンチャー企業が続出するきっかけになったといっていい。
 中央制御下のネットワークから、中央のないネットワークへシステム転換するとき、さかんにリエンジニアリングという言葉が飛び交ったが、まさに情報産業のビッグバンだったのである。その結果、情報装置を使ったネットワーク社会、ネットワーク組織あるいはフラットな組織などといわれる組織が出現した。
 問題は、ネットワーク組織は優秀な人間の能力をフルに発揮させることができるということなのである。米国ではそのような組織がぞくぞくと名乗りをあげ、停滞していた産業活動に活力を吹き込んだ。これに対し、日本はどうか。優秀な人や企業が、中央集権的なシステムに押しつぶされて、ネットワーク組織の芽が埋もれているのである。いまこそ、創造を醸し出すための破壊が必要なのだ。

1999年 6月28日

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